区が支給する株式会社保育園運営費法人本部に多額の流用 日本共産党区議団が調査

 台東区が株式会社運営の認可保育園に支給している保育委託費や私立保育所振興費。その相当額が法人の本部経費や区外の保育園に回っていることが、日本共産党区議団の調査でわかりました。本来なら保育士の給料や保育の質の向上を通じ、子どもたちの成長や安全に充当すべきお金が、本社の高額役員報酬や株主配当に充当されるのは見過ごせません。

 区議団が情報公開で入手したのは、2017年から2022年度(現時点)の「前期末支払資金残高の取崩し協議書」。株式会社運営の各認可保育園が利益を繰り越して積み立てた資産(前期末払資金残高)を流用する際、東京都に取崩しの事前協議を求める文書です。
 区内に23園あるうち17園が、35回にわたり6億4700万円を本部経費や区外の保育園開設や運営費への流用に充てることを都に申請しています(写真)。

 2021年度は10園が2億6695万円の取崩し協議をしていますが、台東区はこの10園に対し、同年度14億5826万円の運営費(保育委託+私立保育所振興)を支給しています。なんと18%超に当たります。
 件数が最も多いのは株式会社日本保育サービス(本社・名古屋市)。区内で運営する2つの認可保育園が2016~2021年度10回、1億5206万円(残高3億4634万円・取崩し率44%)を本部経費や、町田・府中市、江東・足立区などで開設する保育園の費用に流用しています。同社の持ち株会社・JPホールディングスは10年前、東証一部上場を果たし、株主への高配当で保育業界最大手にのしあがりました。
 積立金の取崩しが最も顕著なのは株式会社さくらさくみらい。2021年度区内1園が2回・計7176万円取崩しの協議をしていますが、この時の残高が8383万円ですから85%流用しています。このうち2068万円は区内での新園開設費用ですが、それを差し引いても6割以上の取崩しです。この年度、同社持ち株会社の取締役を兼ねる社長、副社長、専務は8532万円の役員報酬を得ています。
 株式会社運営の保育園における保育士の人件費率は4~5割台がほとんどで、社会福祉法人の7割台に比べ低賃金に抑え込まれています。これが強蓄積の要因であることは明らかです。
 今後、子どもの数が減少し、保育園が廃業していく時代が目の前に迫っていると言われています。すでに、子どもや保護者を差し置いて突然廃園を表明する株式会社が続いています。儲かるときはどんどん進出、儲からないとなったらさっさと撤退、というようなやり方は許せません。
 台東区は今後、子どもの最善の利益を中心に据え、公的保育を軸に質の向上を何より大切に保育園整備を進めていくべきです。

カクサン