区立特養等の2指定管理者が撤退
介護基盤を脆くした台東区

 区立の特別養護老人ホーム台東および特別養護老人ホーム浅草と、それぞれの在宅サービスセンターを運営する2つの指定管理者が期間を1年残し撤退するという異例の事態が生じました。2つの地域包括支援センターの変更に直結するという面でも重大です。介護基盤を脆くさせている台東区の責任が問われます。

 特養台東問題について区は、指定管理者である社会福祉法人・聖風会の「財務状況の悪化」による継続困難が理由、としています。特にデイサービス部門の赤字についての指摘がありました。
 区はこの後の事業者公募に当たり、当該地域はデイサービスの必要性が低下しているとして、デイサービスの廃止方針を打ち出しました。「台東区指定管理者制度運用指針」では「管理運営に要する経費に、指定管理業務の実施に伴い見込まれる収入を充当してもなお不足する金額」を基に指定管理料を決める、としています。そうであるなら、指定管理期間中であっても、採算が悪化することが予想できた業務を見直すべきだったのではないでしょうか。
 特養台東は2001年の設立当初から聖風会が運営。在宅サービス、地域包括支援センターの業務を20年以上担い、南部地域の高齢福祉・地域包括ケアの中核を担ってきました。こんな事態に至るまで放置してきた区の責任こそ問われるべきです。
 自民・公明政権は介護利用料の引上げ・保険給付の削減などの改悪を繰り返し、介護事業所やケア労働者の社会的経済的地位を低下させ深刻な介護従事者不足をまねいています。
 台東区は国の切り捨てを容認し、保険料を改定の度に値上げしてきました。
 指定管理者制度は、区の「公の目的」実現のため、区に代わって公共の施設を有効で効率的な運営を民間に行ってもらうというのが趣旨です。区が、「指定管理者にお任せ」、「できなければ取り消し」、というような姿勢では「公の目的」は達成できません。犠牲になるのは区民です。特に福祉分野での指定管理者制度は人件費削減を伴うだけに現場の声によく耳を傾け慎重にすすめるべきです。
 最も歴史があり、区が出資する台東区社会福祉事業団が運営する特養浅草(写真)と在宅サービスセンター、地域包括支援センターの撤退は大きな波紋を広げています。ある医療関係者は「30年間積み上げてきた地域住民と特養・包括・浅草ヘルプ・ケアマネジメントセンターの人材との協働、信頼関係、技術が失われる」と危機感露わです。
 事業団が1年を残して撤退するのは(仮称)竜泉2丁目福祉施設の準備を行うため。事業団は浅草と竜泉を併せて運営できないほど体力がなくなってしまったのでしょうか。
 台東区や区議会与党は30年来、事業団の「経営効率の悪さ」をことさら強調し、高齢・児童福祉部門ともに民間の営利目的の法人との競争、「経営改革」の名の下で職員の給料切り下げ、指定管理料・委託料の減額を断行してきました。
 事業団では昨年10月、賃下げと人事考課制度を導入。これに失望し、前年度末少なくないベテラン職員が退職しました。ところが区は指定管理者評価で、この人事考課制度をもっと進めよとあおる始末です。
 今回の2つの指定管理者撤退は、介護を指定管理者制度に丸投げし、指定管理者制度そのものも適正に運営せず、セーフティネットを担う事業団を弱体化させて地域の福祉基盤を脆くさせてきた区の姿勢に根本原因があります。

カクサン