加齢に伴い聴力機能が低下した高齢者(65歳以上)の補聴器購入費用の台東区の助成制度ですが、11月の事業開始前に大幅な拡充が行われることになりました。当初の「住民税非課税世帯・上限5万円」を「住民税非課税14万4900円、住民税課税7万2450円」にします。
20日の区議会保健福祉委員会への報告で、伊藤のぶ子区議が実効性のあるものにするためさらなる改善を求めました。
第一は事業開始前に、耳鼻科医や認定補聴器技能者ら専門家の意見を十分聞いて進めることです。
伊藤区議の質問に対し、理事者は「耳鼻咽喉科の医師との調整や連携、協力をいただくため、現在区内の医師の意見をいただき調整に入っている。検討会も今月末には行う。検討会には認定補聴器専門店の参加は考えていない」としました。認定補聴器技能者の専門的知見は貴重であり、今後参加してもらうべきです。
区内では補聴器外来のある永寿総合病院や、区立台東病院、浅草寺病院との連携も重要です。伊藤区議は、制度設計段階から3病院の事業への積極的な参加を求めるべき、と主張。理事者は事業の流れや医師意見書の様式が決まった段階で連携をすすめていく、という見解にとどまりました。
第二は、11月からの申請受付の際、それ以前の耳鼻科の受診に基づく診断書が使えるかどうか、という点です。
区は11月から発行する区の様式に基づく医師意見書のみが対象で、そのことを事前にしっかり周知する、と答えました。
本来、医師意見書は、医師会等と協議し公定価格を決め料金を補助すべきです。
第三は、利用者に対するフォローアップ調査を区が行うことです。
区は、認定補聴器専門店のみが購入先になるため、そこに所属する認定補聴器技能者によるフォローが期待されるので、区によるフォローアップは考えていない、としました。
この事業は、聞こえの衰えが社会的孤立や認知症の因子になることが明らかになり、それを防ぐことが目的です。政策目標を達成していく上で、実効性を検証することは不可欠です。そのためには、事業を利用した区民のその後の状態を区が把握していくことが必要です。
第四は、聴覚障害の福祉サービスと選択できるようにすることです。この事業は、聴覚障害者手帳を持っていない人が対象ですが、聴力検査結果等により手帳を保持した方が様々な支援がある可能性もあります。
区は、窓口での相談を丁寧に行い、本人の希望で選択できるようにする、との見解を明らかにしました。
先行自治体の中で補助額トップの港区では、補聴器の売り込みが「加熱」し、購入者は激増しましたが、医療関係者には「事業目的が達成される方向に進んだのかどうか疑問」との声も上がっています。今回、台東区の補助は都内でもトップ水準になっただけに、検査、診断、選定、フィッティング、フォローをしっかり行えるよう制度設計をさらに磨き上げるべきです。