「住民が主人公」すわってこそ
仙台・函館市の行政デジタル化を視察

 台東区議会企画総務委員会は5~7日、行政のデジタル化を中心に行政視察を行いました。あきま洋区議が報告します。

宮城県仙台市

 仙台市は「フルデジタル市役所」実現に向け、今年度から3ヶ年の「集中改革期間」に取り組んでいます。コンセプトは「ひと」中心のデジタル化。
 それは、行政サービス・事務事業にデジタル技術を浸透させ、①市民と市役所との接点の変革(書かない・待たない窓口やオンライン手続きの拡充)、②役所の仕組みの変革(事務処理のデジタル・ペーパーレス化や申請・庁内業務データ処理の集約化)を両輪に、というものです。DXにより生み出されるリソースは、対面での親身な相談やデータに基づく有効な政策立案に割り当てるとしています。
 台東区も基本的に同じ方向でデジタル化を進めています。特に斬新さを感じませんでしたが、多くの市民がデジタル化の効果を実感できるよう、申請数上位100の手続きを重点的にオンライン化する、市民の伴走支援、BPR推進課を独立させているなど、印象に残りました。

北海道函館市

 函館市は市公式LINEを活用した「ONLINE市役所」を進めています。広報で活用していた市公式LINEを、情報発信から、市民が情報を入手し、申請・予約などができるようにしよう、とリニューアル。
 これを進めるに当たり、①紙の申請でいいじゃん②既存システムとの使い分け③担当課の負担…という3つの課題に直面した推進担当者の苦労や工夫が、とてもリアルに興味深く話されました。
 ◎紙より申請しやすくするため少ない質問項目で設計する ◎既存システムと使い分けせずLINEという選択肢を広げる ◎推進担当課が申請デモをつくり計画立案から導入までのイメージを担当課に理解してもらう…など。
 産後ケアでは100%、出産・子育て応援給付金では80%がLINE申請になったそうです。

 両市の取り組みは参考になりました。しかし、申請や情報入手での利便性の向上はわかりますが、その結果市民からの相談にどれだけ職員が時間を割けるようになったのか、については検証されていません。また、個人情報保護の面も不安は払拭できません。
 先日、会計検査院の調査で、子育て・低所得世帯向けの給付で、申請が不要な「プッシュ型」支給の対象とならない世帯への周知にばらつきがあり、自治体により受け取れた額に格差があったとの報道がありました。
 自治体が口座情報を把握している世帯には「プッシュ型」で支給できますが、口座未把握の新たな対象者が出てくる場合等は郵送での周知など、自治体の丁寧な対応が欠かせません。行政のデジタル化は必要ですが、基本に住民が主人公、という姿勢がすわってこそ生きることを忘れてはならないでしょう。

カクサン