区内保育のセーフティネット
区職員保育士の確保は急務

 保育士の不足が深刻です。こども家庭庁は今年度、人材確保に向け初めての全国調査に乗り出します。台東区も例外ではありません。保育士の確保は大変で、なかでも区立保育園・認定こども園(以下、保育園等)の保育士確保の困難は区全体の保育の質の低下につながる心配もあります。処遇や環境の改善は急務です。

 この4月採用の区立保育園等の常勤保育士は、15人の確保をめざしたが9人しか採用できませんでした。そのため年度スタートの区立保育園等の保育士数は常勤保育士203人、会計年度任用保育士35人で、前年より常勤3人、会計年度任用4人の減少となりました。
 ここ数年の区立保育園等の保育士数を見ると、常勤は横ばいですが、会計年度任用は減少し続け、2020年の47人が35人と6年間で25%も減ってしまいました。そのため保育士総数は6年で245人から238人に減っています。
 区はこれを派遣保育士で補っており、派遣は2020年度59人だったのが2024年度は89人へと急増しました。子どもの安全、発達のための保育の質にとって危惧する事態がすすんでいます。
 保育士不足は区立だけの問題ではありません。さきの台東区議会第1回定例会でも、認可・無認可を問わず保育士確保の切実性が浮き彫りになりました。
 国は小規模保育所や家庭的保育事業などに対し、保育内容支援、保育士の病気休暇への代替保育、3歳以降の卒園後受入れなどに対応する「連携施設」の確保を法的に義務付けていますが、法施行後、遅々として進まず、当初5年の猶予期間が10年に、このほど15年に延長されました。台東区では「連携施設」を確保できた事業所は26%に過ぎません。
 企業主導型保育所の運営者や利用者が、私立認可保育所や地域型保育事業の保育士同様、保育士の家賃助成を求める陳情を提出。最も市場化がすすんだ無認可保育でも、保育士確保が困難になっている実態が露わになりました。
 どちらも保育士の確保が困難になっていることが背景にあります。厳しい労働に見合わぬ低賃金、長時間変則勤務や職場の人間関係、保護者への対応など、処遇や環境を改善しなければ打開はできないでしょう。
 とくに区立保育園は区内の保育のセーフティネットの役割があります。それだけに保育士不足の打開は急務です。また、来年度から本格実施予定の「こども誰でも通園制度」でさらに保育園と保育士への負担を重くすることは言語道断です。実施を見送るべきです。

上)千束保育園:記事とは直接関係ありません。
カクサン