だれにでもある心の隙間を埋めてくれ、元気をもらえる喫茶店「寿花」(ことぶき、寿2)。ママさんの村奈嘉正子さん(78)は「みんな何かしらの悩みを抱えながら助け合って生きています。たくさんの人間模様を見てきました」と、出会いをふり返ります。今日も、ほっとできる時間と空間を求め、多くのお客さんが訪れています。

多様な人間模様にふれた優しさ
「寿花」は昭和36年、この場所で開業。47年に嫁いできた村奈嘉さんがすぐにお店を支えるようになります。義父・義母を看取り、52歳の夫が亡くなり、2人の子どもを育てながら店を守ってきました。「勤めに行っていたら子どもを育てられなかったかもしれません。多くの人に助けてもらって今があります」と、振り返ります。
モーニングやランチの時間は、近所の高齢者、自営業者やサラリーマンでにぎやかになります。自営業のAさんは「毎日ここでお昼を食べます。野菜不足を補ってくれるし、心にたまっていることを吐き出せる場所」と話します。村奈嘉さんの顔を見て生活のサイクルを整えています。
いつも顔を見せる人が来ないと心配になり安否を確認することもしばしばあります。昨年は、店を支えている息子さんがその人の自宅を訪ねたところ亡くなっていたという事件がありました。2年ほど前、よく顔を出していた近所の人が孤独死し、数か月発見されなかったとのこと、「あの時はショックを受けた」と振り返ります。
「寿花」は、認知症の高齢者や、知的障害や発達障害のある人の安心できる拠り所にもなっています。
Kさんは毎朝顔を出しますが、ご飯を食べたことを忘れて注文することがあるので、村奈嘉さんは、自宅まで行って冷蔵庫に入っているものをチェックし、残っていたらそれを店まで持ってきて食べさせていました。「成年後見人は定期的にお金を置いていくだけ」。昨年Kさんはグループホームに入居しました。
村奈嘉さんの励ましで、知的障害や発達障害の青年が一つの職場に長く勤められるようになったこともあります。「周囲との関係に違和感を感じている人にたくさん出会ってきましたが、そういう人ほど可愛い、と感じます」と、村奈嘉さんは笑います。
ユーミンの苗場コンサートに行くこと、ハワイ旅行、子どもの学校の役員…村奈嘉さんの「3つの夢」はすべて実現しました。
今後の夢は?との質問に「健康で長く働くことかな。『歩けなくなっても、ずっとお店で顔を見せて』とお客さんに言われるのは嬉しい」と答えました。底なしに包容力のある人です。
貴重なセーフティーネット
区議会議員 あきま洋
20年以上前から「寿花」に寄らせていただき、村奈嘉さんの人柄にほれ込んでいる一人です。
私がここを通じて受けた相談は、介護、障害福祉、認知症対応、生活困窮など様々です。まさに地域福祉のセーフティーネットです。
台東区は、住民相互のつながりが希薄になっている、と「包摂的な支援」や「重層的支援」を課題に掲げていますが、机上の計画ではだめ。こういう場所からよく学ぶべきです。