月次支援金、事業復活支援金など、コロナウイルス感染症の影響を受けている中小自営業者を支援する国の給付金で、申請後何度も「不備」の連絡が届き、いくら解消に応じても抜け出せない「不備ループ」に巻き込まれる区民が出ています。背景にはこの制度を審査から決定までベンダーに丸投げし、指導できない政府の姿勢があります。早急に反省・改善し、資格があり申請した事業者に給付すべきです。
Nさん(寿在住)は、イベント関連で働くフリーランス。コロナのためイベントが減り元請会社からの発注が激減し、生活が大変になりました。国の一時給付金、続いて月次給付金を申請し、昨年8月分までは給付されていましたが、9月分の申請以降、「不備ループ」に巻き込まれました。
届いた「不備」連絡には、提出の書類では事業を営んでいることが確認できないと、指示の該当箇所にマーカーのうえ、2年分の事業書類で再申請をとあり、Nさんはその度に解消するための資料を提出しました。
しかし、その後また似たような理由での「不備」連絡が、時に再申請後10分で届き、それに対しその都度コールセンターとやり取りしました。予約制の中央区設置のスキャンサポートセンターも利用し、先方の指導に基づき指定された期限までに資料を送ります。それなのにまた「不備」連絡が来てあらためて対応。そんなことが9回も繰り返されました。
再申請されるまでは「修正対応連絡」が入り続けます。携帯から音が鳴る度にびくつく日々でした。免許証番号の控えによって受け取れる「本人限定受取郵便物」による「不備」連絡も3回ありました。
元請会社には、コロナ禍による事業売上減少率、契約者との反復継続取引の意思、報酬金支払及び振込承認などの書面化をお願いしたり、事前確認先である行政書士には、差し迫る申請締切日のために日曜日にもかかわらずコールセンターに問い合わせをしてもらったり…と、第三者にも影響が及びました。
挙げ句の果てには、提出もしていない登記簿と賃貸借契約書に対して「記載された名義と請求書等および金融機関発行の書類に記載申請者名が整合していません」と明らかなミステイクの「不備」連絡です。
「不備」を解消することに精神が支配され、よく眠ることさえできなくなっていたNさんは、いままでの努力は何だったのか、と怒りに震えました。その後、日本共産党にも相談。Nさん本人の粘り強いがんばりが事態を動かし、ようやく2月末に9月分以降が振り込まれました。
Yさん(千束在住)は、舞台を中心に活動する俳優で、公演がほとんどなくなり、昨年は月次給付金がくらしの命綱でした。事業復活支援金を1月31日の初日に早速、申請しましたが、間もなく「不備」連絡がきました。
事業を営んでいることが確認できる書類、所得の種類変更の説明を税理士から取り寄せるなど、指摘されるたびに「不備」に対応。税務署に期限内に確定申告すればいいはずなのに、住民税の確定申告書を求められ、区役所に無理を言って期限内に申告したことを証明してもらいました。しかし、コールセンターは「必要なかった」とあしらいます。「馬鹿にしているのか」とYさんは震えました。
4回の「不備」が届いたとき、指定期日が示され、それまでに解消しなければならないのに、ウェブページが凍結され、再申請できない状況になりました。この時、あきま洋区議が立ち会って、直接中小企業庁に連絡し期日延長させました。
ところが5月10日夜、5回目の「不備」連絡とともにウェブページが開き、それに対する解消作業に入ろうとした翌日朝7時半に、不支給の決定通知が届きました。Yさんは「一夜で対応せよ、と最初からできないことを要求するとは許せません」と、怒っています。
はじめから給付する気なし 行政不服申立てできぬ無法
区議団長 あきま洋(談)
「不備ループ」は一度まきこまれたらなかなか抜け出せません。支援金事業を国から委託されたベンダー大企業(デロイトトーマツ)の胸先三寸といっていいでしょう。まるで最初から支給しない人を決め、不備連絡を何度も発し、毎回変わるコールセンター(ベンダー)の担当者が思い付きで一貫性がない対応を行います。
申請者は疲れ切って申請しなくなるか、一方的に指定された期日を超え不支給決定になるかです。心底から怒りがこみあげます。昨年12月、「不備ループ」を取り上げた、わが党・笠井亮衆議院議員に、萩生田経産相が陳謝しましたが、実態は変わっていません。
不支給決定がなされても、行政不服審査の対象にならないという委託事業のあり方の問題もあり、コロナで窮地に立っている中小自営業者を等しく救う制度とは程遠い運営です。早急な改善を求めます。