来年10月からの消費税インボイス制度で、台東区シルバー人材センターが3千万円も負担増に…消費税が、国民同士で「押し付け合う」弱いものいじめの税金であることがあらためて浮き彫りになっています。インボイス制度は中止すべきです。
台東区シルバー人材センターは約1千人の会員がいます。これらの会員が植木せん定や除草、ふすま貼り、筆耕など区民のくらしや、区営駐輪場の管理やリサイクル自転車の修理など公共に貢献する仕事を担っています。その会員に支払う「支払配分金」(賃金ではありません)は年間約3億円に達しています。
現在、シルバー人材センター等の課税事業者は様々な取引の中で受け取った消費税から、仕入れの際に支払った消費税を差し引いた金額を納税する「仕入税額控除」が認められています。 しかし、来年10月にインボイス制度が始まると、シルバー人材センターがこの「仕入税額控除」をするためには、会員から「適格証明書」(インボイス)をもらわなければなりません。会員はインボイス制度以降もいままで通り消費税免税事業者なのですが、免税事業者は「適格証明書」が発行できません。
会員が「適格証明書」を発行するには、課税事業者として登録し、従来の「配分金」の中から消費税を別途納付する必要があります。 高齢者への「配分金」は一人平均年間40万円程度。そのわずかな収入から4万円もの消費税を納税するというのはあまりに過酷です。
会員に負担させられない
台東区シルバー人材センターも「会員に消費税を負担させるわけにはいかない」と話しています。
そうなると、シルバー人材センターは支払った消費税を控除することができなくなります。年間約3千万円が法人の負担になりますが、収支相償が原則で剰余金を積み立てられない公益社団法人ですから払いようがありません。
全国シルバー人材センター事業協会はこの間、インボイス制度の適用を除外すること、所得税非課税範囲程度の少額所得事業者にはインボイス発行を免除し、仕入れ税額控除はこれまで同様帳簿で行えるよう政府に要望しています。
日本共産党の宮本徹衆議院議員は5月18日、衆院厚生労働委員会で、インボイス適用除外などの特例を認めよ、さもなければ国が肩代わりせよ、と迫りました。これに対し政府は「シルバー人材センターに限って特例を設けるのは公平性を欠く」(後藤厚労相)、「地方自治体も含めた発注元に適正な価格設定の要請を行っている」(岡本財務副大臣)と答弁。
しかし、現在でも消費税を発注元に転嫁している以上、さらに上乗せを、という根拠は成り立ちません。
台東区では、令和3年度のシルバー人材センターの総契約金額3億4千万円のうち区などの公共的契約額は2億4千万円・71%です。残りの1億円は民間ですから消費税負担分をお願いすれば、仕事は他に出すと契約を断られる可能性があります。
最終的には台東区が、3千万円程度のシルバー人材センター負担分を肩代わりすることが必要です。同時に台東区は、消費税が税金を価格に転嫁できない弱い立場の事業者にしわ寄せされるという矛盾を明らかにし、インボイス制度そのものを中止させる世論を喚起していくべきです。