老人福祉館等の公共施設統廃合
区の計画、福祉後退のおそれ

 台東区はこのほど、「公共施設のファシリティマネジメント推進のための基本方針」を発表。その中で公共施設の「機能統合・適正配置素案」の対象施設を、①集会室を有する施設(区民館、社会教育館、老人福祉館等)、②三ノ輪福祉センター、特別養護老人ホーム蔵前、と明らかにしました。本年末までに「中間のまとめ」を行い、2023年度中に総合管理計画改定と併せ策定します。公共施設の統合・廃止、区民福祉の後退につながらないか、と不安が広がっています。

 区内公共施設の統廃合は「適正配置」の名のもとにすすめられてきました。区立小・中学校は、2度にわたる「適正規模・適正配置」方針により大幅に減少しました。そのことが教室の不足や、大規模改修時の一時移転場所確保を困難にしていることは明らかです。
 今回はとりわけ高齢福祉に資する施設の統廃合が心配です。
 区内の老人福祉館等をふりかえると、今戸老人福祉館が2008年9月30日に閉館し、産業研修センター内に橋場老人福祉館として移転。入谷老人福祉館(写真)が2022年3月31日に閉館し、入谷地区センター内に一部機能移転しました。谷中コミュニティーセンターの高齢者交流の機能も2015年、防災コミュニティーセンターへの改築に伴いなくなりました。
 今戸や入谷はともに機能の一部を近隣の区民施設に移転しましたが、谷中も含めすべて浴場がなくなり、高齢者のふれあいやコミュニティーづくりに果たしてきた機能が大幅に低下したことは否定できません。
 今戸老人福祉館で見ると、2007年度の利用者は3万5560人でしたが、橋場老人福祉館に移転(今戸・橋場が半年ずつ開館)の2008年度には2万6898人に激減。コロナ前の2017年度2万2784人、2018年度2万1519人とさらに減っています。
 これに対し、存続している三筋老人福祉館の同時期を比べてみます。2007年度3万1288人、2008年度3万5380人(今戸閉館が影響し増えたと見られる)、コロナ前の2017年度3万0428人、2018年度2万8672人と健闘しています。
 橋場や入谷で行われているような健康メニュー等、目的のある利用はそれで重要ですが、そもそも老人福祉館は、目的がなくてもフラッと入って交流できるスペースとしての機能が最も大事ではないでしょうか。
 「機能統合・適正配置」の名のもと三筋や東上野の現在の機能が後退すれば、ただでさえコロナ禍で寸断されてきた高齢者のふれあいの場が少なくなることは必至です。
 三ノ輪福祉センター、特養蔵前は未利用地になっていきますが、障害福祉、児童発達支援などまだまだ足りない福祉分野の機能を中心に存続・活用すべきです。

カクサン