保護課ケースワーカーの不適切事務問題 人員不足解消など抜本策を

 台東区保護課のケースワーカーの職員が、保護費の支給に係る不適切な事務を行っていたことがこのほど明らかになりました。区は再発防止策を発表しましたが管理体制の強化面ばかり。人員不足、自立支援はじめ事務量の増大、困難ケースの増加と長期病欠者の増加等が生じている構造的要因にメスを入れた抜本的な解決策が求められます。

困難事例増え健康壊す職員も

 区が発表したケースワーカーの不適切な事務とは、収入申告の適切な変更処理を行わず過払いや未払いを発生させたり、自腹で扶助費を立て替えたというもの。どれも不適切で許されない行為です。
 しかし、日本共産党区議団の調査では、このケースワーカーは後輩の面倒をよくみて、困難ケースもいとわず対応する経験豊かな職員であることがわかりました。
 区は「事務処理内容及び事務の進捗に係る組織的な管理の不徹底」が原因とし、再発防止策として、研修の充実と法令順守の再徹底、査察指導員への報告での統一的なルールの確立、複数の査察指導員による相互の進捗状況チェック、情報共有が円滑に行える職場環境の見直し…など管理強化策を打ち出しました。
 区は、9年前、ケースワーカーが保護費を着服した際も、今回同様、管理強化で再発防止という方針でしたが、管理職体制や査察指導員の整備はすすみませんでした。管理体制の強化の中身が検証されなければなりません。
 社会福祉法では、1人のケースワーカーが担当する生活保護世帯は80世帯、ケースワーカーの支援を行う査察指導員をワーカー7人に1人置くことを標準としています。台東区は東京都からの再三の勧告もあり、ワーカー1人当たりの担当世帯数は減少しました。
 しかし7月末現在台東区の生活保護は6581世帯・7018人で、1人の査察指導員が標準を1人上回る8人のワーカーと650の保護世帯を抱えています。
 しかも福祉分野の経験が浅い、若いケースワーカーが、精神疾患を抱える困難事例を担当しなければなければならないような状況があり、メンタルをはじめとした長期病欠者が増え、慢性的な人員不足になっています。「1ワーカー担当世帯数は事実上80を上回っている」(保護課職員)といいます。
 今回の区の再発防止策は、係長級、とくに査察指導員の管理的役割を重視しています。しかし、本来彼らが担う役割は、ワーカーの精神的な支柱になることであり、福祉職として育てる教育的指導です。区は、その役割が発揮できるよう人事を見直すことこそ優先すべきではないでしょうか。一職員の不祥事を、チェック体制やルールなど狭義の管理体制の課題に矮小化せず、現場のケースワーカーや査察指導員の声をよく聞き、福祉職としての誇りとやりがいが感じられるような根本的な改革を行うべきです。

カクサン