《新春座談会》
無料低額診療所「どの命も平等」
増える仮放免外国人、人道的医療制度を

 区内の橋場診療所は、健康保険証のない人、難民申請中の外国人ら、医療が受けられない人を診察し命を救っています。特に新型コロナウイルス感染症以降、仮放免中の外国人路上生活者が増えたことで患者が急増。「どんな人の命も平等」と、最前線で奮闘する今川篤子医師、石川藍事務長と日本共産党伊藤のぶ子台東区議が話し合いました。写真左から、今川医師、伊藤区議、石川事務長。

今川 私は隅田川医療相談会などで路上生活者を医療につなぐ活動を続けていますが、その中に、健康を悪化させている外国人が目立つようになりました。 日本人や在留資格のある外国人なら生活保護で医療につなげられますが、在留資格を失った仮放免の外国人は救えません。何とかならないか、と思っていました。
 そんな時、2年ほど前に法人内の出向が許された橋場診療所が無料低額診療所だったことで、継続した診療が必要な人に医療の光を当てることができるようになりました。本当に嬉しいことです。ただ、診療所にはお金が入らないので心苦しく思っています。
石川 医療費減免額は2021年度221万円、22年度288万円、今年は11月までで既に264万円です。月に約30万円の診療負担です。これに加え薬代も月数万円負担しています。
 でもこれは社会情勢の変化のもとでの当診療所の責務だと思います。コロナで入管を出された仮放免の外国人や仕事を失った外国人が、そのまま路上生活に移行し、今川先生ら困窮者支援を行う団体と接するようになったのです。
伊藤 先日私も、橋場診療所歯科で、仮放免になった外国人を治療していただき本当に助かりました。無料定額診療所はあらためて命のセーフティネットだと実感しました。
今川 高血圧・脂質異状症のコンゴ人、戦争で腰を痛めたイラン人、妊娠20週のコンゴ人女性など、様々な患者がいます。。他団体が抱えているケースではステージ4のがん患者も。貧困で不規則な食生活が続き、健康悪化、合併症に発展します。日常的な服薬と食事・運動など生活習慣の改善がどうしても必要です。みるみる健康を回復している人もいます。
伊藤 無料低額診療所はこういう時、重要な役割を果たしています。自治体に期待する支援策はありますか。
石川 負担の軽減など求めたいですが、無料低額診療はそもそもが臨時的・応急的な制度です。人道的な立場からの公的医療制度を国につくってほしいと思います。
今川 ホームレスになって台東区内のシェルターに保護された外国人たちが支援団体のスタッフとしてボランティア活動に加わり、三ノ輪商店街で段ボール回収を行って子ども食堂に寄付する活動に参加しています。地域住民と親しくなり、仲良くお花見をするようになっています。顔が見える範囲で日常的につながっていけば生きていけます。あとは政治が命を保障することです。
石川 ウクライナやパレスチナはじめ世界中で難民が増えています。これにどう対応するか、日本の姿勢が問われるのではないでしょうか。現場では、同じ地域に住む仲間、一員として受け入れる動きが広がり始めています。
伊藤 人権問題で台東区は多くの課題を抱えています。性別や国籍での差別はやめ現にそこに存在する人、ありのままのその人をまるごと尊重する地域社会をつくるため、区政を変えていく年にしたいです。本日はありがとうございました。

カクサン